TABLOID VOL.2
デザートのような甘い刺激を
甘い刺激をこの手に。
日差しが暖かい日の午後、
山奥にあるカフェへ入った。
木の香りがする空間で、時がゆっくりと流れていた。
オーダーしてから、沈黙の 5 分間。
その間、私の脳裏には、想像できるうる範囲でゆずと向き合い、
過去の「ゆずごと」を脳裏に浮かべながら待っていた。
店員がゆっくりと歩いてくる。
「ゆずソーダです」
グラスの中にいる小さなゆずのツブツブが私に話しかけてくる。
「しゅわしゅわ、最高よ」と、聞こえもしない言葉を感じ、
うん。疲れているな。と、ふと気づく。
ひと口目、ストローを通り口の中がゆずで満たされ、脳がシャキッとした。
もう一口、もう一口と自然に体が動いていた。
キンとした氷の刺激。飲み終えるのもあっという間。
仕事や家事、人付き合いなど、全てのことを忘れた瞬間。
これは、自分へのご褒美時間なんだと、勝手に思った。
期待を裏切らない味。いや、それ以上で、良いこと、嫌なことも忘れ、
ゆずソーダが私の体に入り、スーッと心が満たされていった。
あたりまえだけど、そこがおもしろい。